こめなべ

マンガ・アニメ・ドラマや映画の感想&声劇台本置いてます

マンガ『葬儀屋事件簿』全2巻ネタバレ感想-元・警視庁の刑事という設定がオイシイ!

こめなべ-20161126

葬儀屋の社長が元・警視庁の刑事という設定だなんてオイシイ!

コミックシーモアで見かけ、タイトルに惹かれて読んでみました。
マンガ葬儀屋事件簿』(小林薫著・ビーグリー)全2巻

https://amzn.to/2ODDY9x

https://amzn.to/3cxsfRY

タイトルから察するに、葬儀屋さんの中で起こる事件のあれこれかと思っていたら、割と警察が絡んでくるような事件のオンパレードでした。
なにせ葬儀屋を営む社長の寿誠志郎が、元・警視庁の刑事という設定なのです。

同期が警察署の署長をしていて、ツーカーの仲だったり。
刑事時代に輝かしい功績を持っているらしく、辞めてからも寿のことを尊敬している刑事も多く、今はもう民間人だというのに、捜査情報をすんなり渡してくれます。

なのでとてもスムーズに事件が解決していって、サクサク読めました。

今回は、マンガ『葬儀屋事件簿』全2巻のネタバレ感想を書きます。
結末も含みますので、苦手な方はご注意ください。

マンガ『葬儀屋事件簿』全2巻のざっくりしたあらすじ

女子アナウンサー志望の田中よし子(たなかよしこ)は、テレビ局の入社試験を受けまくるが、全滅。
生活のため、求人情報誌で見つけた、司会のバイトに申し込む。

『寿典礼』の社長・寿誠志郎(ことぶきせいしろう)は、よし子を見ると即決採用する。
しかも面接直後から、仕事をすることに…向かった先は警察署の霊安室

どうも様子がおかしい…と訝しむよし子に、誠志郎は「うちは、葬儀屋だ」と告げる。
会社名から、職種はブライダルコーディネーターだと、勝手に思い込んでいた、よし子。
辞退を申し出るが、既に雇用契約書類にサインをした後。

「辞めるなら、違約金を取る」と、誠志郎に脅されてしまう。
よし子は、渋々、仕事を手伝うことに同意する。
ところが、寿典礼の担当するご遺体のほとんどは、事件絡みの変死体だった。

凄惨なご遺体との対面に、よし子は逃げ出しそうになる。
ところが、ご遺体のわずかな異変も見逃さない誠志郎は、自殺と断定された事件に疑問を持つ。

誠志郎は、稼業を継ぐために退職したが、元は警視庁刑事で、東大法学部卒のキャリアだった。
そのため同期にあたる、西池袋署の副署長・神宮寺竜也(じんぐうじたつや)とは仲が良い。

葬儀屋として、葬儀を完璧にこなしつつ、独自の推理で犯人を追い詰めてゆく、誠志郎。
よし子は、誠志郎の無茶苦茶だが、鮮やかな手並みに感動する。

葬儀の後、誠志郎はよし子に「君は葬儀屋に向いている」と言う。
よし子の声には、1/f揺らぎの周波数が含まれており、それは聞くものたちの心を癒していくのだ。

誠志郎に褒められたよし子は、もうしばらくバイトを続けてみようと決意するが、事件絡みのご遺体に慣れることはなかった。

しかし女性ならではの観点から、よし子の発言が事件を解決する糸口になることもある。
なんだかんだ言いながら、よし子と誠志郎の息はピッタリと合ってゆく。

力を注ぐ方向を間違えてしまった女性のお話が印象的

私が一番印象に残ったお話は、『散骨』です。

告別式に大きなユリの花束を抱えて現れる、女性。
式の司会をしていたよし子は、彼女を何度も見かける。
疑問に思い、誠志郎に相談するがスルーされてしまう。

数日後。
子どもを亡くした父親が、寿典礼に怒鳴り込んでくる。
何事かと話を聞くと、遺骨の中に成人の…つまり、他人の骨が混ざっていたというのだ。

誠志郎さんはすぐさま神宮寺に電話し、「死体遺棄事件だ」と告げる。
故意に混ぜられたと推理する、誠志郎に大きなユリの花束を抱えた女性を思い出す、よし子。

誠志郎さんは早速、女性が告別式に出没する条件を探し始める。
女性が出席した告別式の共通項を発見した誠志郎は、よし子を囮にワナを仕掛ける。

“死んだこと”にされたよし子は、棺桶の中でその女性を待っていた。
すると、誠志郎の推理通りに女性が現れる。
ユリの花束を棺桶に入れた瞬間、よし子は彼女の手を掴むー…。

女性が遺棄していたのは、亡くなった夫の母親だった。
長年介護していたものの、ある日、母親が亡くなってしまう。
仕事を辞めて介護をしていたので、収入は母親の年金だけが頼りだった。

今死なれては困る…そう考えた女性は、死亡届を出さずに自分で遺体を処理し、母親が生きていることにして、年金を受け取ろうと考えたのだ。

…なんか、発想がすごいなと。
遺体を細かく切り分けて、それを全然知らない人の棺に混ぜて火葬しようとするなんて。
事情を聞いても、ゾッとしました。

そこまでのパワー(強かさ?)があるのなら、年齢関係なしにバリバリ働けそうですけれど。
そっちには意識が、向かなかったんですね。
…勿体無い。

最初、渋々お仕事をやっていたよし子が次第に、葬儀に対するプロ意識を持つようになっていく姿も、たくましくていいなと思いました。

真っ直ぐで感情的な、よし子と。
ちょっと変わり者で、頭のキレる誠志郎。
合わないようで合ってるバランスが、絶妙でした!