うっかり立ち読みできないくらいの作品です
マンガ『踊り場ホテル』(山口美由紀著・白泉社)。 昔から山口美由紀さんの描かれる、絵と物語が大好きです!
>出版社公式サイト⇒白泉社
やわらかくて、優しくて。 そして、思わず涙が込み上げてくる物語が多いので、本屋さんでは表紙買いです。 見本が置かれている場合でも、立ち読みしてたらうっかり号泣…しそうになったことがあったので。 それ以来、山口さんの本は必ず自宅で読むことにしています。
『踊り場ホテル』も読んでいると、たびたび涙が込み上げてくる作品でした。 ティッシュ、ものすごい使ったー…。
今回はマンガ『踊り場ホテル』全1巻のネタバレ感想を書きます。 結末を含みますので、苦手な方はご注意ください。
マンガ『踊り場ホテル』全1巻のざっくりしたあらすじ
時のないホテル…通称:踊り場ホテル。 そこは、区切れることなく続く時間の中で、ありえないはずの“隙間”にはまった人たちが集う場所。
このホテルは外界との時間の流れが異なるため、様々な国の、様々な時間から“お客様”が訪れる。
彼らを接客しているのは、“支配人”の春彦(はるひこ)という日本人男性。 一度ホテルに足を踏み入れた人には、必ずお部屋で休んでいただくまで、帰せない仕組みを忠実に守っている。
ある日、ホテルを訪れたのは、初音(はつね)という女子高生。 ホテルに驚きテンパる彼女を、春彦は長期滞在中のお客様・タツノスケに任せた。
春彦が席を外すと、初音は過去・現在・未来が入り組んでいるホテルの仕組みに気づき、過去へ跳ぼうとする。 過去や未来への移動は、時間の圧力がかかって危険だと知っているタツノスケは、初音を止めようと必死!
過去を変えたいという初音に、理由を尋ねるタツノスケ。 初音は、父親がリストラに遭い、突然貧乏になってしまったことを告げる。
そして初音がそこまで必死になるのは、子どもの頃から習っていたバイオリン。 さして好きでもないし、下手くそだったけれど、演奏するたび父と母が喜んでくれたから、続けていた。
何事にもテキトーで、チャラチャラして自分のことしか考えてなかった初音は、父が過労で倒れるまで、両親の苦労に気づけなかった。 そのことを、初音はずっと悔いている。
タツノスケは、それだけ両親が初音のことを大事にして、愛しているのだと…悔いるよりも、感謝すべきだとアドバイスした。
だが初音の気持ちは、収まらない。 タツノスケを残して、過去へ過去へと遡る。
時間の圧力で潰れそうになっているところに、タツノスケと春彦が現れた。 春彦は2人を救出して、ホテルへ戻る。
そして過去を変えたいと切望する初音に、過去は変えられないことを説く。 自分の時間の上を歩いていけなくなったとき、このホテルが現れるので、ゆっくりひと眠りして、帰ってくださいと諭す。
しかし、このホテルに宿泊した間の記憶は、現実に戻るとき全て消えてしまう。
初音に恋をしたタツノスケは、初音が捨てたバイオリンを、拾って自宅へ届けた。 自分もホテルから出れば記憶を無くしてしまうけれど、いつか現実でも出会えるようにとー…。
数ヶ月後。 記憶の無いまま、現実世界で再開する初音とタツノスケ。 「初めて会った気がしない」と、意気投合するのだった。
支配人の春彦の一生にティッシュ何枚も使ってしまいました
この他に、郵便配達員の恋と、春彦の過去が明らかになる物語の…計三編で構成されています。
どれも読んでいて、切なさで胸が苦しくなるのに、最後は愛おしさでブワッと涙が溢れるのです。 春彦の過去編とかもう…嗚咽しながら読みました。
踊り場ホテルの支配人としては、クールビューティな春彦。 過去編では、彼の幼少期から、亡くなるまでのことが描かれているのですが…まあ、今からは想像つかない姿が見られます。
か、可愛いのなんの!! ギャップ萌え、しまくりです!! マリーという西洋の女性に恋してから、春彦の人生が変わっていくところも、どんどん惹きこまれてしまいます。
ラストは「よかったねー!よかったねー!!」と、ティッシュ何枚も使って、涙と鼻水を拭ってしまいました!! 春彦の過去編は、物語の終わりに初音や郵便配達員の、その後も描かれているので、さらに高まります!!
「おめでとー!おめでとうー!!」って。 できるなら、もうちょっと踊り場ホテルに訪れる人を見ていたかったですけども。 春彦の幸せそうな顔を見たら、なんかもういいや!って気持ちになりました。
幸せな気持ちになりたい時に、オススメの1冊です!!