かなり激しいアクションシーンの連続でかなりの血が流れます
表紙のイラストが綺麗で、読んでみようという気持ちになりました。
タイトル: VANILLA FICTION(ヴァニラ フィクション)【8巻完結】 作家名: 大須賀めぐみ ジャンル: 少年マンガ / ミステリー・サスペンス / ヒューマンドラマ 出版社: 小学館
VANILLA FICTION 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
おとぎ話のような物語なのかと思いきや、結構流血シーンの多いサスペンスです。 ヒロインの女のコも、かなり傷だらけになりますし。
死んでも死なない…人間ではない"不死の存在"も登場します。 彼らの生き返りの場面がどろっとしているので、そういったシーンが苦手な人は読めないかもしれません。
今回は、マンガ『VANILLA FICTION(ヴァニラ フィクション)』全8巻のネタバレ感想を書いています。 結末までわかる内容ですので、ご注意ください。
マンガ『VANILLA FICTION(ヴァニラ フィクション)』全8巻のざっくりしたあらすじ
人気小説家の佐藤忍(さとうしのぶ)は、バッドエンドしか書けないことが悩みだった。 どんな物語でも、必ず最後にとびきりの不幸を描いてしまう。 現在はその作風がウケているものの、いつ飽きられるかわからない。
佐藤の担当編集者である・影山(かげやま)は、「次回作こそハッピーエンドの物語を!」と熱望する。 しかし佐藤は、道行く人を見ていても無意識にその人物をどう動かせば、最悪の展開になるかを考えてしまうほどの職業病。 「自分にハッピーエンドなんて、書けるハズがない」と、落ち込む。
バスに乗り遅れ、道を歩いていると、ある廃ビルの前を通りかかる。 ふとその中へ足を踏み入れると、2人の男が殺し合いをしていた。 それを窓際に座って眺める、傷つき汚れた少女。
何が起きているかわからない佐藤だったが、ナイフを持つ男の言葉に、次に殺されるのはこの現場を見た自分だと察する。 武器もなにも持っていなかったが、持ち前の洞察力と想像力を用いて、相手のバッドエンドを予想。 相手を誘導し、佐藤は見事に危機を切り抜ける。
ところが。 この少女・牧野エリ(まきのえり)を助けたことで、佐藤はとんでもないゲームに巻き込まれてしまう。 そのゲームの進行役だという男・太宰治(だざいおさむ)曰く“神が仕組んだ、双六ゲーム”。 佐藤のゴール条件は「羽白島の北端の岬でエリとクッキーを食べること」。 クリアできなければ、数年後に世界は滅び、クリアできればカオス理論的に物事が連鎖し世界は救われるらしい。
訳のわからない展開に混乱する佐藤だったが、プレイヤーの印である指輪をはめられた以上、ゴールを目指す以外の選択肢はなかった。 ゴールせずに指輪を外したら、佐藤は死んでしまうというのだ。
さっさとこの理不尽なゲームをクリアしたいと考える、佐藤。 だが、簡単にはいかない。 このゲームには佐藤の他にあと1組、プレイヤーがいるのだ。 彼らもまた自分たちの“ゴール”を目指すため、エリを奪いにやってくる。
そんな佐藤の敵は、鞠山雪彦(まりやまゆきひこ)。 刑事だが、大義名分をかざして喧嘩をしたい為に、警察へ入ったという、変わり者。 鞠山には、駑螺滋恵(どらじぇ) という小学5年生の息子がいる。 愛する駑螺滋恵と共に生きると決めているため、鞠山は死ねなかった。 どんな手を使っても、誰が亡くなろうとも、ただ自分がエリとゴールすることだけを考える。
鞠山の企てにより、殺人と覚醒剤使用で指名手配される、佐藤。 人目を避けながら、なんとかエリを探し出しゴール地点へ向かおうとする、佐藤と太宰。
このゲームの中で、初めて自分に優しくしてくれた佐藤に、絶大なる信頼を寄せるエリだったが、駑螺滋恵と過ごす内に「プレイヤーである鞠山が亡くなれば、この子が1人になる…」という、葛藤を抱える。 そんなエリに、佐藤は「このゲームに関わった全ての人間が、幸せになれる終わりを考える」と約束した。
エリを奪われた鞠山は焦っていた。 鞠山のゴールは「自分の誕生日に、誕生日ケーキのロウソクをエリと一緒に吹き消すこと」だったからだ。 誕生日当日、なんとしてもエリを見つけたい、鞠山。
そんな中、彼のゲーム進行役・紗々蔵(ささくら)が、「駑螺滋恵がもうすぐ、死ぬ」と告げる。 ゲーム進行役の紗々蔵や太宰には、死の近い人間がわかるようになっているのだ。
ホテルに居る、駑螺滋恵の元に駆けつける、鞠山。 ホテルでは火災が起きており、駑螺滋恵はその中で倒れていた。 息子を助けるため、鞠山は“プレイヤーの指輪”を、駑螺滋恵に託し亡くなる。 鞠山に「息子を頼む」と言われた紗々蔵は、駑螺滋恵を護り彼と共にゴールすることを新たに決意する。
佐藤が逃げれば逃げるほど、殺人犯としての悪名も高まっていく。 それを面白く思ったのが、佐藤の同業者である小説家の春夏秋冬ニ(ひととせならぶ)だった。 彼は佐藤に近づき、彼の行動、感情をリアルに味わうことで、佐藤をネタに小説を書こうと目論む。
春夏秋冬は“サードマン”という、極限状態に陥ったとき、自分の命を助けるために生まれる幻影…という能力を持っていた。 その力を使い、このゲームがよりドラマチックになるよう、佐藤たちを追い詰めてゆく。
しかし佐藤は、エリや駑螺滋恵、太宰や紗々蔵を守りたいと考える。 いつものようなバッドエンドではない、ハッピーエンドを描いてゆく、佐藤。 エリ、駑螺滋恵、太宰、紗々蔵、亡くなった鞠山や、ゲーム中に出会った人々。 佐藤はゲームにおける自分の役割について、何も考えていなかったことに気づく。 そして、このゲームをハッピーエンドに持ち込むには、自分の行動がカギになることを確信した。
春夏秋冬によって、無理矢理連れて来られた羽白島の北端の岬で、佐藤はエリとクッキーを食べる。 それは駑螺滋恵と紗々蔵を守ることとは、真逆の行動に見えた。
ところが“相手がゴールすると死ぬ”と言われていたハズの、駑螺滋恵も紗々蔵も生きている。 自分の思い描いたシナリオ通りに事が運ばないことに、激怒する春夏秋冬。
実は佐藤はクッキーを食べる前に、自分の指輪と駑螺滋恵の指輪を交換していたのだ。 そして佐藤は、紗々蔵に「ゲームの休戦」を申し出る。 自分の命を代償にして。
佐藤の予想通り、春夏秋冬はキレて佐藤を殺しにかかった。 致命傷を負いながら、春夏秋冬のシナリオの欠点をあげてゆく、佐藤。 さらに、春夏秋冬に共同制作を提案。 エリのために書いた短編小説を元に、新作を書いて欲しいと頼む。
佐藤のシナリオは…エリに自分の死を悟らせないまま、“ゲームが終わった”と思わせること。 そうすることで、ゲームの進行役の為だけに生まれ、ゲーム終了と共に消える存在だった、太宰と紗々蔵も助かる。 また駑螺滋恵が、死ぬこともない。 エリは佐藤が考えた小説を元に、春夏秋冬が書いた小説を“佐藤の新作”として、読んでゆくー…。
真実を知り、佐藤の最期を看取った太宰は、彼からプレイヤーの証である指輪を受取る。 次のプレイヤーを探す為ではなく、形見として。 佐藤亡き後、指輪をネックレスにした太宰は、時々彼の指輪を手に悲しげに目を細めるのだった。
佐藤さんが亡くなるなんて思ってもみませんでした!
なんとも、切ないお話でした。 救いがない…訳ではないのですが、佐藤さん…なんかもっと他に方法なかったんですか?!と、読み終えた後、泣きたくなります。 佐藤さんが死んでしまうなんて…予想外でした。
佐藤さんは生きること、死ぬことよりも、とにかく小説を書くことが好きで好きで。 このゲームに巻き込まれてからも、何を一番恐れたかって「小説を書けなくなること」だったくらいです!! そんな佐藤さんが、自ら小説を書けなくなる手段を選ぶなんて…。 どれほど、辛かっただろうかと。
ただ、ゲームを進めてゆく内に、佐藤さんのエリちゃんに対する想いが、強くなっていったのもわかります。 子どもが自分の親を、純粋に慕う以上に強い想いを向けてくるエリちゃん…佐藤さんの為なら、自分の命すら投げ出せるほど。 そんな彼女に、憧れ、戸惑い…「もっと生きて欲しい」と、願うようになった佐藤さん。
それに、ゲーム進行役の太宰さんも、佐藤さんと過ごす内に“これまでに感じたことのない想い”にぶち当たる。 「幸せってなんだろう?生きるって、なんだろう?」 ゲームを進める為だけに、突然自然界が産んだ存在であるが故、ゲームが終われば削除されることも、薄々気づいていた。 だから、投げやりに生きているのだけど…佐藤さんと過ごす内に、生きる楽しさを見つけようと、努力するようになる。
そんな太宰さんに、佐藤さんもまた「もっと生きて、いろんな想いを味わって欲しい」と思うようになる訳で…。 太宰さんにしたら、佐藤さんともっと一緒に居たかったのに。 自分の為に命を捨てられたのでは、文句も言えないですよね。
亡くなる直前まで、人のことを考え最善を尽くした佐藤さん…本当にスゴイ人だなぁ。 スゴイといえば、佐藤さんの身体能力は普通よりも、低いくらいなのに、洞察力と想像力を武器に闘ってこれたのも、その才能がずば抜けていたから。
世の中には“殺人犯”として、名前が残ってしまうのだろうけれど…こんなに優しくて、強い小説家さんがいたこと、忘れません。 佐藤さん、カッコよかったです。