こめなべ

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映画『紙の月』ネタバレ(結末含む)感想

こめなべ-20160919

主人公の横領の手際よさが段々恐ろしくなってゆきました

映画館で予告を見て、ずっと「うわぁ…見たいなぁ…」と思っていた作品でした。 直木賞作家・角田光代さん原作の映画紙の月』。 最近、Huluで見つけたので、早速視聴してみることに。

出演は、宮沢りえさん、池松壮亮さん、大島優子さん、小林聡美さん、田辺誠一さん、近藤芳正さん、石橋蓮司さん。

予告では緊迫感のあるBGMとともに流れる映像を見て、派手な印象を抱きました。 ところが本編は、割と淡々と物語が進んでゆき…宮沢さん演じる・梨花さんが、気がつけば「恐ろしいことしてるよ、この人!!」という事態になってます。

横領という罪を犯しつつも、歯止めの効かなくなってゆく姿が、とてもリアルに描かれていました。 正直、怖い。

>参照:『紙の月』予告篇 - YouTube

今回は、映画『紙の月』のネタバレ感想を書きます。 結末についても触れていますので、苦手な方はご注意ください。

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映画『紙の月』のざっくりしたあらすじ

エリート会社員の夫・梅澤正文(田辺誠一さん)をもつ、梨花宮沢りえさん)は『わかば銀行』の営業として、働いている。 パートタイマーから、契約社員になれたことで、仕事に熱が入る梨花

新しく担当になった平林孝三(石橋蓮司さん)は、お金持ちだが何を考えているかわからない人物。 困惑する梨花を救ったのは、孝三の孫・光太(池松壮亮さん)だった。

ある日、梨花は帰宅途中に光太と出会う。 自分を見つけた瞬間、目を輝かせ必死に話しかけてくる、光太。 夫・正文との生活に息苦しさを感じていた梨花は、光太の好意に溺れてゆく。

だが孝三から「借金だらけの孫と関わるのは、止めてくれ!」と釘をさされてしまう。 梨花は光太から、借金の理由は学費を工面するためだった…と聞いていた。 孝三に貸してもらうよう頼んだが、聞き入れてもらえず、仕方なくサラ金から借りてしまったのだと。

孫の学費も出さず、光太だけを責める孝三に怒りを覚えた梨花は、孝三から預金のために預かっていた200万円を、着服する。 そして、お金を受取る光太に罪悪感を持たせまいと、“自分は裕福である”ように振舞い始める、梨花

そのためには、お金が必要だった。 梨花は、銀行の証書をプリンターでコピーし、宛名と金額を印刷。 社印まで偽造し、パッと見では偽物とわからない証書を、作り上げた。 そして自分を信頼してくれる顧客から、梨花は次々とお金を騙しとってゆく。

騙し取ったお金は、すべて光太とのために使った。 彼の喜びが、梨花の喜び…罪を犯す罪悪感よりも、幸せが勝ってゆく。

しかし光太は、梨花を生粋のお金持ちだとは思っていなかった。 梨花が無理をしていることに気づいていたのだ。 そしてこの関係が、長く続かないことも。

現実を突きつけられた梨花は、目の前が真っ暗になる。 追い打ちをかけるように、銀行では梨花の多額の横領が見つかってしまう。 警察へ出頭するか、財産を処分して返済するか…その二択を迫られたとき、梨花は窓ガラスをぶち破り逃走する。

それっきり、梨花の行方はわからなくなってしまった。 事件後、何事もなかったかのように、日常は繰り返されてゆく。 誰もが梨花のことを、忘れてしまったようだ。

その頃。 梨花は日本を離れ、遠い外国の地で自分の罪から逃げ続けていた。 彼女を裁ける者は、もう誰もいないー…。

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なにをすることで幸せになれるかは人それぞれなんだと痛感

そもそも…なんで梨花さんが、光太さんに惹かれたのかが、サッパリ理解できませんでした。 会社帰りに後をつけられたりするような人に、好意を持つかなぁ?と。 それだけ夫の正文さんに嫌気が差していて、本能で真逆のタイプを求めたのかもしれませんが。

梨花さんのお金に対する執着心?については、挟まれていた中学生時代のエピソードから、するりと納得できました。 お金を…お金が無くて困っている人にあげることで、自分が得た満足感に酔ってゆき…中毒みたいになっちゃったんですね。

だから梨花さんは、ずっと"お金をあげる立場の人"でいたかった。

ところがエリート会社員の正文さんと結婚したものだから、今度は自分が"お金をもらう側の人"になってしまう。 私にしてみたら、"お金をもらう側の人"になれるなんて、喉から手が出る程うらやましい立場だけど、梨花さんにとったら"お金をもらう側の人"は、苦痛でしかない。

そんなときに、自分が"お金をあげる立場の人"になれる相手・光太さんを見つけたんですね。 光太さんはそれは見事に喜んで、梨花さんの満足感を満たしてゆく。 そうか。 梨花さんも、光太さんのことが好きだった訳じゃなくて、"お金がなくて困っている彼に尽くす自分"が、好きだったのかもしれません。

だから光太さんが別の女性と付き合っていることを知ったとき、浮気云々よりも「もう自分だけが、彼に尽くせない」と、梨花さんは失望したんじゃないかな…と思いました。 彼女はどんな手を使っても、"自分でお金に困っている人を助ける"ことに、意義(満足感?)を見出していたので…独占欲は強かっただろうと。

結局。 横領がバレて、梨花さんは1人海外へ逃亡を図る訳ですが…そこで、中学時代に自分が寄付をして助けた(であろう)男性に出会います。 もう亡くなってしまったと思っていた彼に出会い、そして自分の助けがなくても幸せに生きている彼を見て、梨花さんはさらに絶望してしまったのではないでしょうか。

だからこそ…逃げて、逃げて、逃げて。 今度こそ自分だけが与えられる人間を探そうとするのではないかなぁ…と思いました。 もう誰も、梨花さんを止める人はいないのですから。

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