思いもしなかったラストが待ち受けていました
マンガ『うせもの宿』(穂積著・小学館)。
コミックシーモアの無料お試し期間中に1巻を読んで、続きが気になり購入しました。
第1巻を読んだ時には、思いもしなかったラストが待ち受けていました。
今回は、マンガ『うせもの宿』全3巻のネタバレ感想を書きます。
結末までわかるものとなっていますので、苦手な方はご注意ください。
マンガ『うせもの宿』全3巻のざっくりしたあらすじ
坂道を上った先にある、大きな宿。
その名も“うせもの宿”。
かなり古い建物だが、ここへ来れば必ず探し物が見つかるという。
マツウラという男に案内されて、様々な客がこの宿へやって来る。
宿には”女将さん”と呼ばれる、少女がおり探し物を見つけるなら、彼女に話を聞かないといけない。
ところが女将さんは、この宿へやって来る客を、あまりよく思っていなかった。
つっけんどんな物言いと、突き放すような態度に腹を立てる者も多い。
そもそも“自分がどうしてこの宿へ来たのか?”…それさえも忘れているからだ。
時々起こる、記憶のフラッシュバック。
客は、探し物をしている内に、自分が死んでいることに気づく。
取り乱す客を、優しくなだめる女将さんは、その人の“本当に探しているもの”を見つける手伝いをしてやる。
この宿には、女将さん以外にも従業員がいる。
彼らは全員ここへ探し物をしに来たのだが、なぜか見つけることが出来ず、宿に留まっているのだ。
女将さんも、その1人。
ただし彼女には、ここへ来るまでの記憶が全く無かった。
だから、自分の探し物がなんなのかもわからない。
マツウラは女将さんに嫌われても、しつこく客を連れて宿を訪れる。
ふと、彼は自分のことを知っているのではないかと思う、女将さん。
マツウラは女将さんが生きていた頃の、恋人だった。
2人は同じ児童養護施設で出会い、施設を出た後は別々に暮らしていたが、ある日再開する。
マツウラこと松浦篤志(まつうらあつし)が、詐欺で捕まり刑務所に入っていたことを、女将さんこと寺島沙希(てらしまさき)は知っていたが、知らないフリをして付き合う。
子どもの頃、彼にかけてもらった言葉に救われた沙希は、なんとか篤志と幸せになりたかったのだ。
ところが、篤志の昔の仲間が声を掛けてくる。
また一緒に“仕事”をしよう…というのだ。
断れば沙希を人質にとると脅す仲間に従う、篤志。
だが彼のとった行動は、その仲間を殺すことだったー…。
しかし、篤志が殺したのは沙希。
篤志に人殺しをさせたくないと、沙希が仲間と刃物の間に飛び出してしまったのだ。
彼女の息が止まるのを見て、篤志は自らも首を掻っ切って、後を追う。
沙希は篤志に会いたいと望みながら、この宿へ来た。
探し物が見つかれば、ここを出て行かなければならないと知った沙希は、探し物を見つけたくないと願い、自らの記憶を消したのだ。
篤志に出会い、記憶を取り戻した沙希は、まだ生きている篤志に向かって、生きて欲しいと告げると、宿を後にした。
篤志は長い昏睡状態から目覚め、沙希の願った通り生きてゆくことを決める。
え?!女将さんて物の怪じゃなかったの!?
女将さんって、物の怪で…てっきりこの宿の主なんだと思っていたので、心底驚きました。
普通の人間だったんですねー…。
マツウラさんのことも、死神なんだと思っていたのですが…全然違いました。
まさか好きな女性(女将さんこと、沙希さん)に会いたいがために、通ってくる健気な人だったとわ。
ただのチャラい人だと、思ってました。
嫌われても憎まれても、沙希さんの視界に入れることが嬉しいと…愛おしさを募らせる、マツウラさん…というか、篤志さんの想いがメッチャ切ないです。
記憶を無くして、身体さえ幼いものに変わっていても、彼女を愛する気持ちは変わらない…。
沙希さんも、篤志さんに会いたい一心で…きっといつか来るであろう、彼を待つために記憶を捨てるほど、篤志さんを想っていて…。
なんというか。
この2人なら、生まれ変わってもまた出会えるんじゃないか…なんてことを、思いました。
個人的には、篤志さんが勢い余って門を越えてくれることを、願ってしまったのですが…沙希さんは許しませんでしたね。
強いなぁ…。
ここまで来てくれているならもういっそ、一緒にあの世までー…なんて、思ってしまいますけど。
追い返してしまうとは。
叶わないとわかってはいるのですが、沙希さんと篤志さんが生きて幸せになれる未来も、見てみたかったなぁと思います。