ファンタジー要素強目で魅せる原爆というテーマ
マンガ『グローバルガーデン アインシュタイン睡夢奇譚(すいむきたん)』(日渡早紀著・白泉社)。 原爆をテーマにした作品なのですが、ファンタジー要素がふんだんに含まれており、とても読みやすくて素敵な物語です!
本編には原爆ドームとか、広島の人間にとっては身近な場所も登場するので、自然と愛着が湧いてきます。 加えて、個人的に大好きなアインシュタインまで登場するとあって、ウハウハが止まりません。
今回はマンガ『グローバルガーデン アインシュタイン睡夢奇譚』全8巻のネタバレ感想を書きます。 結末までわかるようになっておりますので、苦手な方はご注意ください。
マンガ『グローバルガーデン アインシュタイン睡夢奇譚』全8巻のざっくりしたあらすじ
篤生涙花(あつきるいか)は、不思議な力を持つ女のコ。 母親・可奈子(かなこ)の風邪を治したり、可奈子の大切にしている植木が枯れそうになったのを、元気にしたり。 極め付けは飛行機事故で亡くなった弟・昌人(まさと)の代わりに、弟になりきろうとする。
可奈子が昌人の死を受け入れられず、心を病んでしまって以来、母のためにと尽くす涙花。 それは身体の組織まで、女性から男性へ変化させるほどだった。
一方。 アインシュタインの意思を継いで、“涙花”を探している男性が居た。 彼の名前は、ヒカル。 アインシュタインが飲むハズだった、延命のためのタブレットを1錠飲んで、半世紀もの間、涙花を探し続けた。
ようやく見つけ出した涙花に、ヒカルは原爆が投下されたため、腐って枯れてしまった“世界樹(ユグドラシル)”の再生を求める。 世界樹が復活し、根を地球に張り巡らせることで、世界が安定を取り戻すのだと、ヒカルは言う。
突拍子も無い話に警戒する涙花だが、ヒカルに触れて記憶を読んだ時に、彼の話が事実であることを知る。 また、彼が世話をするロビンという少年に、親しみを感じ仲良くする内、自然とヒカルにも惹かれてゆく。 そして、昌人であるフリをすることを止め、涙花として生き始める。
ヒカルを愛するようになった涙花は、いつしか自分の力で、彼の望みを叶えたいと思うようになっていた。
ところがもう1人、アインシュタインのタブレットを飲んだ人間・ハルヒが現れる。 ハルヒはヒカルと違い、自分の望みを涙花に叶えて貰おうとしていた。 そのため、何度も涙花とヒカルの邪魔をする。
ヒカルとハルヒは幼馴染で、共に未来を夢見る能力を持っていた。 必ず当たるその夢で、“グローバルガーデン”へ行くのは、金髪の青年だとわかっていたのだ。
ハルヒは「グローバルガーデンへ行くのは自分だ。サッサと涙花を譲れ!」とヒカルに迫るが、ヒカルは「グローバルガーデンへ行くのは、ロビンなんだ」と告げる。 ヒカルを連れて行くつもりでいた涙花は、その告白を受け止められない。 さらに、ヒカルは「自分はもうすぐ死ぬ」と言うのだ。
予知通りに亡くなったヒカルを、どうにか目覚めさせたくて、力を暴走させる涙花。 そんな彼女をなだめたのは、一気に成長して声も出せるようになった、ロビンだった。
ロビンはヒカルとアインシュタインのDNAを用いて作られた、クローンだとわかる。 彼は身の内に、一連の“グローバルガーデン”に関する、全てのからくりの答えを持っていた。 ヒカルを生き返らせる術もわかるという、ロビン。
ただし、クローンであるロビンに残された時間も少なかった。 ロビンの言葉を信じ、広島へ向かう涙花。
ロビンは、涙花を連れて原爆ドームへ入る。 2人が揃うことで、グローバルガーデンへの扉が開くー…そこにはもう1人の涙花である、スクルドがいた。 スクルドは世界樹を護る存在で、願い事を叶えるときの力で、世界樹を再生させることができるのだ。
涙花はアインシュタインの望みである、“進化した人類”をアインシュタインの記憶を持ったロビンとし、そのロビンをヒカルと自分の子どもとして産みなおす!と、宣言。 スクルドは、その願いを叶える。
ロビンは世界樹の再生と共に、転生の準備に入り、ヒカルも生き返ることができた。 数年後、涙花はヒカルの子どもとしてロビンを産み、親子3人で仲良く暮らしてゆくのだった。
平和だと思える時間を積み重ねてゆくことの大切さ
アインシュタインが、原子爆弾の元になる公式を発見し、そのために苦悩していたことを、このマンガで初めて知りました。 そして、アインシュタインが日本をとても愛していたことも。
なんていうか…戦争は人間の本能で、なくすことは出来ないにしても…もっとやりようがあるんじゃないかと、つくづく思います。 世の中にいる賢い人が知恵を出し合えば、戦争に向かうためのエネルギーを、いい力に変えることもできるんじゃないかと。
ものらすんごいお金使って、人の命まで奪って…戦いが終わったら、残るものなんか何にも無いって、わかってるんですから。 そこへ注ぎ込むお金と人と時間を、別のことに使って欲しいです。
どうしても戦いたいなら、スポーツか何かでその欲を消費しちゃえばいいんですよ。 わざわざ国民を巻き込むことなんて、ないじゃないですか。
平和ボケだと言われようとも、その平和だと思える時間を積み重ねていくことは、容易ではありません。 昨日と変わらない今日を生きられる幸せを、ずっと感じてゆきたいものです。