藤田麻貴さんの作品は掛合いが面白くて大好きです
マンガ『アナザー・キングダム』(藤田麻貴著・秋田書店)。 大好きなマンガ『キッズ・ジョーカー』を描かれている、藤田麻貴さんの作品ということで、無条件に楽しみでした。
しかも裏表紙に書かれているあらすじを見れば、妖怪とか不思議なものが登場するらしい! これは、私の好みです!! ページをめくると、予想以上にガッツリと妖怪(怖いものではなく)が出てきて、とてもツボでした。
今回は、マンガ『アナザー・キングダム』全2巻のネタバレ感想を書きます。 結末を含みますので、苦手な方はご注意ください。
マンガ『アナザー・キングダム』全2巻のざっくりしたあらすじ
子どもの頃から幽霊や妖怪、不思議なものが見える・初瀬ナナオ(はつせななお)。 高校生(正確な記述無し)になっても、霊感持ちという噂が消えず、白い目で見られる日々。
登校拒否を始めて、3日目。 日中を公園で過ごし、帰宅しようとしたナナオの元に、一人の少年が駆け寄ってくる。 会ったこともないハズなのに、少年はナナオのことを知っていて、会いに来たという。
ナナオが困惑していると、クラスメイトの八藤要(やとうかなめ)が現れた。 休んでいるナナオのために、委員長である要が、たまったプリントを届けに来たのだ。
ズル休みはバレるわ、見も知らずの少年に懐かれまくっているわで、泣きそうになるナナオ。 見兼ねた要は、今晩だけなら泊めてやると、自宅へ招く。
普通の人には見えない物が見えてしまうというナナオに、要は「気の所為だから!」と、吐き捨てる。 意外にも要の言葉を否定したのは、少年だった。 なにか知っている様子で、要を挑発する。
ケンカする2人をたしなめて、少年と一緒に寝ることにした、ナナオ。 その晩。 ナナオは、子どもの頃に仲良くしていた妖怪の夢を見た。
「なにかいるよ」と、訳のわからないことを言う子どもだったから、親からも見放されて…。 そんな手を握ってくれたのが、アカジタだった。
目覚めると、隣には少年の姿はなく。 代わりに、真っ白な長髪の男性が居た。 驚くナナオだったが、夢の内容と男性の姿を見て、彼が“アカジタ(赤舌)”という妖怪だということを思い出す。
アカジタは力が弱くなり、消えてしまう前にナナオに会いに来たという。 ナナオは妖怪たちにとって、力の源となる…エサなのだ。
要はナナオを守ろうとするが、ナナオにとっては、自分の命よりも大切な存在。 だからアカジタが、ナナオを喰らいつくそうとしたときも、喜んで受け入れようとする。
ナナオの優しさに、自我を取り戻したアカジタは、言霊使い(言った言葉の通りになること)の要に頼んで、自分を消してもらう。 どうして連れて行ってくれないのか…と泣く、ナナオ。
要はそんなナナオを、からかいながら励ましてやる。 そこへ消滅したハズのアカジタが、現れた! アカジタ曰く、要はアカジタの凶暴性だけを消し去ったので、残った本体だけなら、傍にいても害はないという。
こうしてナナオと要、そしてアカジタの、3人の不思議な関係が始まる。
“言霊使い”と呼ばれる要は、大の妖怪嫌いだが…実は母親・一華(いっか)が、妖怪。 人間の父親との間に生まれた、ハーフなのだ。
一華は、大妖怪の黒?(シイ)にもう何千年も、付け狙われている。 それは、遥昔に出会った頃のこと。
一華は目の前の全てを消して、全てを奪い、山の神までも喰らった。 その神は“不死の珠”をもっており、消える直前一華に呪いをかけた。
何度生まれ変わろうと、一華以外の何者にもなれないという呪いをー…。
気味悪がられたり、傷つけられたりする日々。 そんなとき、一華は黒?と出会った。 周囲と馴染めないもの同士、仲良く旅をして暮らしていたが…人間たちによって、瀕死の重傷を負う。
一華は死の間際、黒?に自分の不死の珠を与え、命を助ける。 その所為で独りぼっちになった黒?は、ただただ一華を想うようになった。
置いていかれた絶望と。 生まれ変わった一華が、別の誰かといることに耐えられなくて。 やがてその想いは、憎しみへ姿を変えた。
黒?は見つけた一華を、どうにかして取り戻そうと一華の夫の魂を奪った。 それでも逃げる彼女に焦れて、要にも手を出したのだ。
要と一緒に過ごしていたナナオとアカジタも、この件に巻き込まれてしまう。 ナナオは黒?に連れ去られてから、彼の意識に同化していた。 黒?が一華のことを、憎んでいる訳ではないことを伝える。
黒?本人でさえ、見失っていた真実をー…。
黒?はただ、一華を呪いから解放してやりたかったのだ。 真意を知った一華は、黒?と一緒に消滅することを選ぶ。
要も要の父親も、一華がまたいつか生まれて、会いにくる日を待つことにした。 もちろんナナオとアカジタも、一緒に。
手紙に取り憑いた付喪神のお話も大好きでした!!
上に書いたあらすじのお話以外にも、いろんな妖怪たちが出てきます。 私は、手紙に取り憑いた…付喪神が好きでした。
恋人に裏切られた男は、別の女と結婚しても、死ぬまで恋人を想い続け。 その姿を傍で見ていた手紙は、彼に恋をした。
自分を作り出した男が亡くなっても、手紙の自分は追いかけられない。 自分だけがこの世に残っていることを、嘆いていたのです。
孫が男と瓜二つだったので、思わず姿を重ねて取り憑こうとしますが…やはり、彼女の愛しい人はその男だけなのでした。
一途に愛し続ける姿に、涙が溢れて止まりませんでした。 まあ、要の言うように…
要「ジーさんが ダメなら 孫にしとくって?
迷惑な 話だ」
>引用元:マンガ『アナザー・キングダム』1巻 100ページより
というところはありますが…この場合、焦がれ続けていた人の姿にまた会えたから、つい…なのではないでしょうか?
彼女が愛していたのは、消える瞬間まで彼一人だったのですから。
妖怪が関わっているファンタジーものって、大好きなのでたまりません!! またいつか、こんな感じの作品に出会えることを祈って!!