好みの作品を描かれる作者さんなら絶対好きな物語!
マンガ『黒檻姫と渇きの王』(草凪みずほ著・白泉社)。
マンガ『暁のヨナ』を描かれている方の短編を、コミックシーモアで見つけて、購入しました。
『暁のヨナ』は、すごく好みの作品なのですが…なかなか買い揃えられません。
もう24巻まで出てるんですもの。
現在、ようやく4巻を購入したところ…。
「先は長いなぁ…」と、途方に暮れていたところへ『黒檻姫と渇きの王』という短編を見つけて、飛びつきました!!
『暁のヨナ』とは全然関係のない物語(…と、勝手に思っております)なのですが、好みの作品を描かれる作者さんなら、絶対好きな物語に違いありません!!
読んでみると、ストライクど真ん中でっっっ!
買ってよかったーと、にまにまが止まりませんでした!!
今回は、マンガ『黒檻姫と渇きの王』のネタバレ感想を書きます。
結末を含みますので、苦手な方はご注意ください。
マンガ『黒檻姫と渇きの王』のざっくりしたあらすじ
小さな村の小さな民族…ウルファ族の少女・セティア。
彼女は別の地へ嫁ぐ日、盗賊に村を襲われた。
母親が身を挺してかくまってくれたおかげで、セティアはたった1人生き延びる。
花嫁衣裳のまま、村人たちの墓を作り弔っていると、そこへアジュライト王一行が通りかかった。
王に委縮し、ひざまずくことなく墓を掘り続ける、セティア。
アジュライト王はそんな彼女を気に入り、城へ連れ帰る。
セティアは、黒格子の部屋に軟禁されているため"黒檻姫(くろおりひめ)"と、呼ばれた。
衣食住に不満はないものの、彼女は何度も何度も脱走を試みる。
そのたびにアジュライト王に阻止されるのだが、諦めようとしない。
理由を訊くと、婚約者の元へ行くのだと言う。
アジュライト王が、どんなにいい男なのかと問うも、セティアは「会ったことが無い」と答える。
ただ、亡き父母の願いであったから、それを叶えたいと…。
アジュライト王はセティアを宝物庫へ連れてゆき、欲しいものを与えるとそそのかす。
金銀ダイヤモンド…あらゆる美しいものが並ぶ中で、彼女がねだったのは"干し草"だった。
故郷の匂いがすると、昔を懐かしんで涙する、セティア。
一緒に寝転がってみるアジュライト王に、セティアは初めて微笑んでみせた。
その表情が気に入ったアジュライト王は、翌朝、山ほど干し草を抱えてやってくる。
従者はそんな王の姿を見て、セティアが傍に居るおかげで、アジュライト王がよい方向へ変わっていっていると笑う。
セティアは従者の言葉に、彼が変わるきっかけをなにか作れればと、願った。
暴君ではあるが、変われる人間だと気づいたから。
ある夜。
アジュライト王の命令で、部屋へ招かれることになった、セティア。
訳が分からず戸惑っていると、従者たちに着付けをされて送り出される。
なんと今夜はアジュライト王とセティアの、婚礼だというのだ。
「自分には、婚約者がいる!」と、抗議するため部屋に入れば…そこには、毒を盛られて苦しむアジュライト王がいた。
医者を呼ぼうとするセティアに、アジュライト王は医者すら信用できないと、笑って制す。
そして「お前さえいればいい」と、すがった。
孤独で不器用なアジュライト王を見捨てられないと思う一方で、セティアは自分を待っているであろう婚約者に操をたてる。
アジュライト王は、セティアの婚約者・バドを探し出し、城へ呼びつけた。
セティアの目の前で「これはお前の婚約者か?」と、問う。
バドは笑顔をひきつらせて、否定した。
バドの言葉に、彼が自分を探すことすらしていなかったのだと悟る、セティア。
アジュライト王は、バドを「殺せ」と従者に命じた。
気に入らないから…と言って。
それを止めようとするセティアさえ、アジュライト王は「もう用はない」と突き放した。
城を出て行こうとするセティアを見送る、アジュライト王。
そこへ、バドが斬りかかってくる。
アジュライト王はセティアを庇い、背中を負傷した。
毒を飲んだアジュライト王は、失明していたのだ。
自分ではもうセティアを守れない…。
だからアジュライト王は、彼女を手放そうとした。
セティアはそんなアジュライト王の想いを知り、自分の中にある彼への愛おしさに気づく。
再度襲い掛かってくるバドから、身を挺してアジュライト王を守ろうとする、セティア。
その気配を感じ取ったアジュライト王は、力を振り絞ってバドを倒す。
深い傷をおったものの、命に別状はないらしい、アジュライト王。
セティアに触れ、彼女の本心を尋ねる。
セティアは「貴方のそばにいたい」と、答えた。
自分の存在を、常に否定されてきたアジュライト王。
人を傷つけることに、特別な感情を持たない、アジュライト王。
それは子どもの頃から、不特定多数の人間に命を狙われてきたからだ…と知ると、切なくなります。
自分の存在を、常に否定されているようなものですもんね…。
ご両親も、もう亡くなっておられるのでしょうか?
守ってくれる人は、誰もいなくて。
お医者様さえ信用できないとか…そりゃあねー、病みますよ!!
(病んでいる訳ではないかもしれませんが)
従者の言っていた、気分が悪いときは2~3人の腕を斬り落とす…という話も、もしかしたら「こいつが犯人だ」と確信できた人間を、裁いているだけなのでは?と、思えます。
なんだろう?
元々は、優しい人なんじゃないかと…アジュライト王って。
やわらかくて、傷つきやすい部分がマヒしているから、冷酷になっているのでしょう。
セティアを気に入ったのも、もしかして自分が死んだときにも、こうやってお墓をつくってくれそうだ…と、思ったからかもなぁ。
例え死んでしまっても、想っていてくれそうだと。
アジュライト王…やっとセティアを手に入れたから、今後はもっと大切に大切にしてゆくんだろうなぁ…って、思わず妄想してしまいます!!